開こう! 21世紀への扉!  残そう! 星空の見える街!

動き始めた「星空の見える街」づくり

 

発 端

 話は、1999年末にさかのぼります。我が家に電話がかかってきました。「城南町の将来を考え、町に提言をするために《まちづくり懇話会(仮称)》を作ってもらいたくて参加者を募集しているので、ぜひ!」と言う内容でした。自発的な任意団体で、町の下請けではないと言うことだったので、断るのも・・・と考え参加しました。  この会は、2000年1月から6月までかなりの回数の討議を重ね、城南町の新10カ年計画策定に向けて、町民として町に希望することを提言としてまとめました。

星空を消さないで

 私は、県民天文台の活動が町のシンボルの一つになっている現状と、しかし、開所以来の十八年間で随分と星が見えにくくなり、特にここ数年、大型商業施設の進出によって城南町の夜空が明るくなっていることに危機感を抱いていましたので、懇話会に参加された大勢の方に「星空の危機」を訴えました。  それは、城南町の自然環境が壊れ始めていることの一つの指標だと問題を提起したわけです。「星空と水と緑と文化の町」として人々が暮らしてきた豊かな環境が城南町には残されており、それが「住み良さ」として感じられてきたのです。バブルがはじけた後の深刻な危機の中で、むやみな開発を求めるより、豊かな自然環境を保全す



ることの中に活路を見いだしてはどうかと提案したわけです。分科会や全体会での討議を経て、全員の賛同が得られ、こうして「星空の見える街」と言うテーマが提言の中に盛り込まれました。

熊日のコラム 「意見・異見」

 次の転機は2000年6月末。熊日新聞社からの電話でした。「読者のページに《意見・異見》と言うコラムがあるんですが、何でも好きなことを書いて良いので、執筆してみませんか? ただし、随想ではなく、行政や社会への提言として」と言うお話。執筆者を捜していたところ、天文台会員の某氏の推薦があったのだとか。  これも何かの縁だろうと引き受けてしまい、それから悩む羽目に・・・・。  最初の回は、「今の学校教育は子供たちの科学的好奇心を育てるという点において失敗している」と書きました。2回目からは、「光害(ひかりがい)」について書いてきました。サーチライトの件では、「設置店に頻繁に税務調査に行きなさい。そしたらサーチライトは減るはず」と書いた原稿を送ったら、「脱税だと独善的な断定は良くない」と修正を迫られてしまいました。  やはり、「星空を守る」などという趣味的な要求は社会に受け入れられないのだろうかと不安がよぎりましたが、気を取り直して少し軟らかい表現に改め、ようやくその回の原稿はOKをいただき、掲載までこぎ着けたのでした。
 この連載のうち、2000年12月まで、4週に1回が私の担当でした。

 

 

宇土ロータリークラブからの支援

 ところが、県民天文台のスタート時にも絶大な力で後押しをしてくださった「マスコミ」の力は強力です。早速コラムへの反応が現れました。環境に配慮し、上方光束を押さえた照明器具を導入して、モデル照明地区を作れば、一目瞭然。地域や世間の「星空の見える街づくり」への理解は一気に進むはず、という意見に賛同者が現れました。宇土ロータリークラブさんです。  これには大変勇気づけられ、早速活動の原案を考え、提出しました。しばらく協議していただき、つい先日(2000年10月11日、水曜日)会合にお招きいただいたので、例によって特製の電子紙芝居を作って上演し、星空を守ることは残された自然を守ることであり、屋外照明の強い光で蛍が激減した例も報告されていて、星空は残された自然をはかるバロメーターだと説明し、助成をお願いしました。  その帰り道、助成プロジェクトの担当責任者の方から、県民天文台を中心とした「星空の見える街づくり」に、活動資金を今後5年間にわたって助成することは内定済みで、後は助成金額を決定する必要があること、そのため、基本計画に沿って活動(事業)計画を具体化して欲しいと要請が有りました。こんなに嬉しいことはありません。みなさんと相談して、早急に計画を具体化したいと思います。

NHK からの電話

 宇土ロータリークラブや「ふるさとネット」との折衝が続いている頃、NHKの火の国ワイドを担当している伊藤アナウンサーか

 

らお電話をいただきました。「新聞記事を見て興味を持ちました。《火の国トゥデイ》というコーナーで、県政などへの提言を紹介しているのですがどうでしょう?」というお誘い。奇しくも10月11日が放送予定とのこと、ロータリークラブさんの件と合わせて、背水の陣で準備しました。  放送をご覧になった会員さんもいらっしゃるかも知れませんね。

時代は「環境」に向かっている

 「星空を守る」という表現ではなく、具体的な照明器具の改善という手法を通して、「星空の見える生活環境を保全しよう」という提案の仕方にまとめて頂いたのが良かったようで、番組後数名の方からお電話を頂きました。おおむね好評だったようです。宇土ロータリークラブの方々にも「支援のし甲斐がある」と好評でした。  突然降ってわいたような話ですが、やはり社会全体が環境問題の重要さに気付き、「ここらで何とかしなくては!」とか「行政に頼るだけでなく、自分たちにできることは何か?」と模索し始めているのではないでしょうか?    そこで、私たち熊本県民天文台が今取り組むべき事はなんだろうと考えてみました。10年前ならとてもこんな事はできなかったでしょう。でも、今だったら受け入れてくださる市民の方は多いかも知れません。誰もが手軽に取り組めて、星空も楽しめるし、ちょっと科学的だったりして役に立つ、そんな観察手法を開発できないでしょうか?  私たちだけがシャカリキに走り回るのではなく、大勢の人たちを巻き込みながら、着実に成果を残していける、そんな手法こそ求められていると思います。

 

 

屋外照明の調査活動

 1つは、地域の夜間照明器具の現状についてみんなで調査に回る活動を組織することです。街なかだろうと郊外だろうと、はたまた田舎だろうと、どこでも結構。これはよい照明だとおすすめできる場所、逆にこんなぎらぎら照明なんてナンセンスという場所などを、どんどん報告してもらい、ホームページで公表したらどうでしょうか? みんなで集まって評価会議なんてのも面白そうです。  ついでに、「改善してください」と申し入れるのも良いかも知れません。大勢でやれば効果は大きいでしょう。お薦めの場所は大いに宣伝し、見学会を開催して、こんな照明が良いんだ! と見本を示すことが大切です。「見ることは信じること」と言いますから、容易に主旨を理解してもらえるでしょう。  1本でも良いから、「上方光束ゼロ」の環境に配慮した照明器具を取り付けてもらう活動は、助成金を使えばできると考えています。ギラギラと四方八方に光を散らしている街灯の中に、1本でも理想的な照明器具が導入されると、その比較は明瞭です。  落ち着いた光は町の雰囲気をも変えてくれるでしょう。こんな照明器具が5年間の間に、点から線になり、面にまで広がると、県民天文台から見上げる星空は、きっと昔の輝きを取り戻してくれることでしょう。

 岡山県美星町のように、山間部の町村での取り組みではなく、都市近郊に位置する城南町や宇城地区での取り組みの意義は大変大きいと考えます。

もっと楽しく

 どのように照明をデザインすべきかなんて、勉強会も楽しいかも知れません。講師を捜してお招きすることも可能です。  または、今はやりのデジカメやビデオカメラ、普通の使い捨てカメラなどを使って、自分の住んでいる場所の夜空の明るさ調べとかを行うのも良いかも知れません。 天体写真に一度は凝ったことのある方なら、同じ日・同じ時刻に別々の場所から、たとえばスバルを撮影してみるというのはどうでしょう。清和高原から撮った写真と、熊本市内から撮った写真とでは、違いを容易に理解できるはずです。複数の地点から一斉に撮影してデータを集めると、具体的に比較できて良いですね。(これって環境庁のスターウォッチングそのもののような気がするけど・・・)  とにかく、普通の人が大勢参加できそうで、おもしろくて、比較データができる、そんな手法を考えてください。  イメージとしては、バードウォッチングやいるかウォッチングなど、これらと同じ感覚で、気軽に参加できそうならベストです。アイデアをお寄せ下さい。  以前やった、「実験で分かる彗星の謎」みたいな、楽しく取り組めるものを工夫・開発して、一人でも多くの人に参加してもらいたいものです。